行列ができる人気店はなぜ破綻したのか?PIECE OF BAKEに学ぶ経営の落とし穴

今回は、行列ができる生ドーナツ店「PIECE OF BAKE」の破綻から学びます。結論は「人気は利益ではない。見るべきは返済後に残る現金」です。

目次

行列ができる人気店が、ある日突然すべての店を閉じた

026年10月6日、生ドーナツ専門店「PIECE OF BAKE」を運営する株式会社Yorkys Entertainment(神戸市)が事業を停止し、自己破産申立ての準備に入りました。公式SNSには「諸事情により全店舗休業させて頂きます。営業再開の見通しは立っておりません」とだけ記されました。

10月に入ってからもハロウィン限定ドーナツの告知など通常の販促が続いており、外からは予兆がまったく見えませんでした。負債総額は約3億5,000万円(帝国データバンクの推定)、従業員は150名です。

行列ができ、SNSで話題になり、売上も伸びていた店がなぜ止まったのか。公表されている情報から、中小企業の経営者が自社に持ち帰れる教訓を整理します。

基本情報

売上は約4億円まで回復していた。それでも財務は苦しかった

東京商工リサーチと帝国データバンクの公表情報を並べると、次のとおりです。

・2019年11月期:売上3億7,964万円

・2020年11月期:新型コロナで売上が2億3,223万円に減り(約4割減)、4,517万円の赤字を計上して債務超過に

・2025年11月期:出店とSNS発信で売上は約4億円まで回復

売上は戻りましたが、財務体質が良くなったわけではありません。利益は創業当初から低調で、赤字の年も散見され、出店費用として調達した借入の負担が重く資金繰りは厳しい状況が続いていました。店を閉じては新たに出す「スクラップ・アンド・ビルド」で収益改善を図っていたものの、2026年9月末に取引先への支払遅延が発生し、約1週間後に全店休業となりました。

参考までに、負債総額の約3億5,000万円は、直近の売上約4億円の9割近くに相当します(推定値と概数の比較なので、あくまで目安です)。

なぜ「売れているのに残らない」のか

出店費用を借入で賄うと、返済が利益を食いつぶす

借入の元利返済が利益を上回れば、売上が伸びても手元に現金は残りません。債務超過とは、資産より負債が多く、帳簿上の純資産がマイナスの状態です。同社は2020年11月期からこの状態でしたが、店舗が増え販促が続く限り、外からは「人気店」に見え続けました。財務の傷みは、支払いが止まるまで表に出にくいのです。

手間のかかる商品は、人気に合わせて固定費が先行する

フードジャーナリストは、店舗を増やすほど家賃や人件費だけでなく、製造・物流・品質管理の負担も増えると指摘しています。生ドーナツは、店で生地を仕込み、発酵させ、揚げ、クリームを詰める手間のかかる商品で、「人気がそのまま利益につながるとは限らない」とのことです。行列に応えるための設備と人員が先に必要になり、固定費が先行します。

破綻の約3か月前に始めた、全国フランチャイズ募集

2026年7月16日、同社は3ブランドの全国フランチャイズ加盟パートナーの募集を始めました。自社の出店資金の負担を軽くしながら店舗網を広げる狙いがあったとみられます。ただ、その約3か月後に全店休業となりました。足元の資金繰りが拡大のスピードに追いついていなかった可能性はあります。

「重大な事案」の中身は分からない。だが破綻は避けられなかった。

代表は、社内で「会社の存続にも大きな影響を及ぼす重大な事案」が判明したと説明しています。内容は非公表で、関係機関への相談を進めている段階とのことです。一方で「今回の結果をこの事案だけの責任にするつもりはありません」とも述べています。

内容が分からない以上、どのくらいの影響があったか知る由もありませんが、少なくとも債務超過と借入負担という慢性的な脆弱性があったために、衝撃を吸収する余力が乏しかった点は押さえておくべきだと考えます。

今回の事例を他人事にしない、自社を守る3つの打ち手

飲食店だけの話ではない。倒産は上半期で509件に

東京商工リサーチの集計では、2026年上半期(1〜6月)の飲食業の倒産は509件で、前年同期比5.3%増、上半期として30年ぶりに500件台となりました。物価高を原因とするものが86件、人手不足に関連するものが36件です。原材料費や人件費の上昇を価格に転嫁しにくい小規模な事業者ほど、負担が重いと分析されています。

行列店という「強い見た目」の会社でも止まる環境です。業種を問わず、自社の財務を点検する価値があります。

そこで、自社を守る3つの打ち手を考えます。

①売上ではなく「返済後に残る現金」を毎月見る

簡易の目安は「営業利益+減価償却費-借入元金の年間返済額」です。減価償却費は、現金が出ていかない費用なので足し戻します。この数字がマイナスなら、売上が伸びても手元資金は減っていきます。試算表が出たら、損益計算書だけでなく、この数字と通帳残高の動きをセットで確認する習慣をつけてください。

②出店・設備投資の「上限ルール」を先に決める

投資の前に、増える返済額を加えても①の数字がプラスで収まるかを確認し、収まらなければ延期か規模縮小にします。あわせて、売上が計画を下回った場合の撤退基準(何か月連続で赤字なら閉めるか)も、出店前に決めておきます。決めずに走ると、赤字店を閉じられず、借入だけが残ります。

③支払遅延が出る前に、銀行と専門家へ相談する

今回は支払遅延から約1週間で止まりました。遅延が出てからでは、選べる手段が一気に狭まります。資金繰り表で3か月先の残高を見て、不足が見込めば、返済条件の変更(リスケ)を銀行に早めに相談してください。法務・税務・労務が絡む場合は、弁護士・税理士・社労士への確認をお勧めします。

※本件は公開報道に基づく整理です。非公表の事項があり、今後の公式発表で内容が変わる可能性があります。自社に当てはめる際は、業種や契約条件に応じて数値で検証してください。

次の一手:返済後に残る現金を計算する

一度、直近の決算書と借入返済予定表を並べ、「営業利益+減価償却費-年間元金返済額」を計算してください。マイナス、またはゼロ近辺なら、新規出店・設備投資の前に返済計画の見直しが先決です。

※本件は公開報道に基づく整理です。非公表の事項があり、今後の公式発表で内容が変わる可能性があります。自社に当てはめる際は、業種や契約条件に応じて数値で検証してください。

まとめ

今回のPIECE OF BAKEの事例から、私たちが学ぶべきことは何でしょうか。

企業の成長を追求することは、経営者にとって重要な使命です。しかし、その一方で、経営判断を誤れば、企業の存続そのものが危うくなります。

そして、経営破綻によって最も大きな影響を受けるのは、経営者だけではありません。今回の事例では、約150人もの従業員と、その家族の生活にも大きな影響が及ぶことになります。

企業経営とは、単に売上や利益を追求することではなく、従業員の雇用と生活を守る責任を負うことでもあります。

どれほど人気の商品を生み出し、行列のできる店舗をつくったとしても、会社が存続できなければ、その成功を持続させることはできません。

だからこそ経営者には、成長を目指す攻めの経営だけでなく、財務基盤を強化し、リスクに備える守りの経営も求められます。

出典:東京商工リサーチ倒産速報(2026年10月7日)、帝国データバンク関連報道、Yahoo!ニュースエキスパート(2026年10月7日)ほか

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この記事を書いた人

ベンチマークコンサルティング代表、中小企業診断士。
|上級ウェブ解析士|上級ウエブ広告マネージャー| 事業承継M&Aエキスパート |東京都中小企業振興公社 事業承継・再生支援アドバイザー|世田谷区振興公社経営相談員|中小企業の経営参謀ラジオ|

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