【書評】『決算分析のプロが教える最高の教訓 倒産』

今回は、

決算分析のプロが教える最高の教訓 倒産

(村上茂久著、発行 大和書房)

を紹介します。

事業を行っていく中で、一番怖いイベントである「倒産」。経営者の方々も、日々倒産に対するプレッシャーに悩まされているのではないでしょうか。

しかし意外にも、なぜ会社が倒産するのか、正しく理解されていない方も多いように思われます。

本書は、そんな倒産とは何かについて、具体的な事例を基に、分かりやすく解説されています。

倒産の裏側にある複雑な構造を、会計的な視点、ファイナンス的な視点を踏まえて多角的に説明されているので、企業分析に関するスキルが深まります。

目次

著者紹介

村上茂久氏

株式会社ファインディールズ代表取締役。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授。Iu情報経営イノベーション専門職大学客員教授。早稲田大学エクステンションセンター講師。跡見学園女子大学兼任講師。

旧新生銀行(現SBI新生銀行)にて、ストラクチャード・ファイナンス業務を中心に、証券化、不動産投資、不良債権投資、プロジェクトファイナンス、ファンド投資業務等に従事。数多くの倒産と再生の業務された経験を持たれています。

また、PIVOTやINNOCHAN等の経済メディアなどでも、決算分析について解説されるなど、幅広く活躍されています。

倒産における2つの大きな誤解

倒産と聞くと、以下のように思われる方が多いのではないでしょうか。

①   赤字が続くと倒産する。

確かに、赤字が続いている会社は今にも倒産しそうですし、実際に倒産した会社は直ぐに消滅するイメージがありますよね。

しかし、実際に赤字続きでも、更には債務超過でもあっても、意外と経営が続いている会社は多いです。事業再生のお手伝いをしていても、よく経営を続けられているなあと関心するケースも良くあります。

倒産の本当の原因は「赤字」ではなく、「キャッシュ」が尽きることです。要はお金が回っていれば、赤字でも、債務超過でも継続して事業ができるのです。

②   倒産したら事業は完全に消滅する

また倒産したと聞いていても、まだ事業を継続しているケースも目にします。これはどういうことか。

たとえば、倒産した企業のブランドや一部の事業が譲渡され、業務が継続され、従業員の雇用も維持さることもあるのです。

倒産とは

そもそも倒産とは何か。

帝国データバンクによると、

『日常的に使用する「倒産」という言葉は、法律用語ではありません。一般的に「倒産」とは、「企業経営行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指します。』

と定義されています。

倒産後の処理①

倒産後の処理として、大きく2つの方向性があります。

  • 法的整理

 法律に則り、裁判所を通じて倒産後の手続きを行う。

  • 私的整理

 裁判所へはいかずに、個別に貸し手である金融機関や利害関係者と相談して、返済スケジュールを調整してもらうリスケジュールや債権放棄等の交渉を行う。

倒産後の処理②

倒産には、倒産した会社そのものをなくしてしまう「清算型」と、支払うべき債務を軽くして事業を続ける「再建型」の2種類があります。

一般的に倒産と聞いてイメージするのは「清算型」ではないでしょうか。

倒産の法的処理は、清算型の破産、特別清算、再建型の民事再生法、会社更生法に分けられ、それ以外は私的整理となります。

出典:本書

本書の構成

第1部では、「環境の変化とビジネスモデルの崩壊」という観点から、企業が本業で稼ぐ力を失っていった事例を取り上げられています。

事例企業

・大塚家具
自己資本比率や流動比率の高さだけでは「本当の安全性」は測れない

・WeWork
原価率の高いビジネスモデルの構造的脆弱性

・アーバンコーポレーション
営業CFのマイナスを財務CFでカバーし続ける構造は市況の変化に弱い

・ヴィレッジヴァンガード
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の長期化は資金繰りを圧迫する

第2部では、「資本と負債の論理」が事業に及ぼす影響を焦点に、

・レナウン
流動比率の高さだけでなく、「売掛金が回収できるか」が重要

・トイザらス
利益よりも資金の流れが企業の命を握る

・オンキョーEH
有利子負債が少なくても、営業債務の支払いが滞れば事業は停止する

・そごう・西武
「会計上の純資産」と「ファイナンス上の株主価値」は異なる

第3部では、「常識はずれのファイナンス」というテーマで、企業の財務の見え方と実態が必ずしも一致しないという観点で、

・スターバック、トライアルHD
「売上債権回転日数がマイナス」企業は、流動比率が低くても危ないわけではない

・ハルメク ※民事再生を経て、再上場
倒産は完全な終わりではなく、新たな成長に向かう「通過点」になり得る

具体的な事例を基に詳細に財務分析、ファイナンスの視点で解説されていますので、非常に臨場感があります。

まとめ

倒産には「最高の教訓」が詰まっていることを感じ取れる一冊です。

誰もが知るスタートアップから大企業まで、様々な企業の具体的な財務構造を分析しながら、なぜ倒産に至ったのかを解説されており、財務分析の理解度が深まりました。

ぜひ、中小企業の経営者の方も本書を読むことで、なぜ企業が倒産してしまうのか、そうならないためには何をしていくべきか、資金繰り管理の重要性等、多くを学んでいただけたらと思います。

決算分析のプロが教える最高の教訓 倒産
(村上茂久著、発行 大和書房)

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この記事を書いた人

ベンチマークコンサルティング代表、中小企業診断士。
|上級ウェブ解析士|上級ウエブ広告マネージャー| 事業承継M&Aエキスパート |東京都中小企業振興公社 事業承継・再生支援アドバイザー|世田谷区振興公社経営相談員|中小企業の経営参謀ラジオ|

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