今回は、米Creativity誌「世界で最も影響力のある50人」、米Forbes誌「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出され、ニューヨークを拠点に世界で活躍するクリエイティブ・ディレクターにして、デジタルエージェンシーのI&CO創業パートナー/クリエイティブ・ディレクターであるレイ・イナモト氏の著書『ブランド・シフト 「信頼」で選ばれる時代の成長戦略』(東洋経済新報社)を紹介します。

中小企業にも役立つブランド構築と「信頼による差別化」の考え方を解説します。
ブランドとは何でないか
一般的に「ブランドとは何か」という視点で説明させるケースは多いと思いますが、本書では「ブランドとは『何ではないか』」という視点から考察されています。
- 「世界観」ではない
- 「人気」ではない
- 「アテンション」ではない
- 「高価」ではない
- 「時価総額」ではない
各項目毎に具体的なブランドに関する事例が述べられています。
例えば2番目の「人気」の項目では、ファッションブランドのバーバリーについて具体的に記載されています。昔日本では女子高校生に、イギリスでは熱狂的なサッカーファンであるフーリガンに指示され、一時的には売上と株価は伸びました。しかし結果的にはブランドが棄損し、昔のファンが離れていってしまったと。
ブランドは、一時的な人気ではなく、長期的な信頼によって築かれる必要があるのです。
ブランド構築に対する考え方の変化
また、これまでのブランド構築にありがちな、「何をどう伝えるか」「どうすれば売れるか」といったマーケティング的な思考に基づいた、機能を超えた「意味」や「価値」を売ることから、「信頼」で選ばれる時代になったと考えられています。
つまり、本書が考えるブランドとは、選ばれ続けるための理由、すなわち「信頼による差別化」によるものと強く主張されています。
著者は同書で、次のように述べています。
「意味を買う時代」から「信頼で選ばれる時代」へシフトしている。
どういうことか。
これまでのブランド構築は、マーケティングにおける「ファネル」の考え方を前提に設計されてきました。

ブランド・シフト 「信頼」で選ばれる時代の成長戦略
認知→関心→検討→購入といった、一方向の流れですね。
しかしこのデジタル時代に顧客は、様々なタッチポイントがある中で、今のマーケティングファネルモデルは、現実の顧客行動とかけ離れてしまっているということ。そして信頼は一方通行では築けないのです。
ブランドのフライホイール
従来のマーケティングファネルに代わる新しい構造である「ブランドのフライホイール」を提唱されています。
- COMPANY:「会社」が生み出す「プロダクト」
ブランドの起点は「会社」であるということ。そして会社の理念が明確であれば、それが行動基準となってプロダクトや体験に一貫性が生まれる。
- PRODUCT:「プロダクト」が魅了する「顧客」
理念が具体的な形として表れるのが「プロダクト」。
プロダクトは、企業の理念や視点を可視化するメディアであり、ブランドを語る存在そのものである。
- CUSTOMERS:「顧客」が信頼する「ブランド」
理念から生まれたプロダクトが、顧客の間で語られ、別の顧客を生む循環が、ブランドを加速させる。「このブランドがつくるなら信頼できる」という理由で選ばれるようになり、価格や機能の比較だけでは測られない、「信頼による差別化」が生じる。
- BRAND:「ブランド」が差別化する「会社」
ブランドは判断軸として機能し、信頼を生み出す構造そのものが、企業の最大の資産になる。

ブランド・シフト 「信頼」で選ばれる時代の成長戦略
具体的な事例として、ユニクロの「ラウンドミニショルダーバック」について述べられています。イギリスのインフルエンサーでない一般の若者のSNSから拡散され、世界的なヒット商品となっていった。もともとのユニクロの「LifeWear:あらゆる人の生活を、より豊かに、快適に変えていく究極の普段着」という理念を体現した商品が、「買って終わり」ではなく、「使うことで他人に進めたくなる」情報の発信力を持ち、結果的に信頼感を勝ち取り、他社と差別化された好事例として紹介されています。
他にも、アシックス、アップルなど具体的な企業の事例から、分かりやすく解説されています。
本書を読み、ブランディングではなく、ブランド構築の重要性に気づかされました。自社のブランド戦略を検討されている方は、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
合わせて、著者が配信されているポッドキャストを視聴されると、更に理解が深まると思います。
ぜひそちらもチェックしてみてください。
「Brand Shift だれも教えてくれない経営とブランドの話」


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